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日本のDX推進を阻む課題に迫る。海外と日本のDXは何が違うのか?【全産業連携DXセミナーレポート Vol.3】

こんにちは!ミーク広報です。
ミークは、2023年4月に「全産業連携DXセミナー」と題するセミナーを開催しました。本セミナーでは、日本のDXを牽引する企業の役員や業界キーパーソンの方に登壇頂き、企業のCDOなどのデジタル担当・システム部門の方々を中心に、多くの皆さまにご参加頂きました。
noteでは本セミナーのダイジェストをご紹介します。
今回は、CDO Club Japan 理事・事務総長 水上晃様によるセッション「日本のDXの姿~海外動向との比較~」のレポートをお届けします。

*本レポートは、ライター・佐藤信彦さんに取材・執筆いただいたものになります。

CDO Club Japan 理事・事務総長 水上晃氏

CDO Club Japan 水上 晃
デジタル分野の専門コンサルタントとして、デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティングなどのコンサルティングファームに複数所属
現在は最高デジタル責任者「CDO」の世界規模となるコミュニティの日本の事務局運営にて活躍中

海外と日本のDXは何が違うのか? 日本のDX推進を阻む課題は?

DXは業務の単なるデジタル化でない。ICTで業務プロセスの変革や新事業の創出を起こすことが目的だ。そんなDXを成功させるには、何が必要なのだろう。

ミークが2023年4月に主催した「全産業連携DXセミナー」では、企業でDXの推進役になるCEOやCOO、CIO、最高デジタル責任者(CDO)などがDXを自分ごとと捉えられるよう、DX実践のヒントになる具体的な事例や考え方をキーパーソンが語った。本連載は、同セミナーの一部をピックアップしていく。

世界のDX事情をよく知る水上氏、日本のDXをどう見る?

第3回の本記事は、CDO Club Japan理事・事務総長の水上晃氏による講演「日本のDXの姿 ~海外事例との比較~」を紹介する。

水上氏は、デロイト トーマツ コンサルティングやPwCコンサルティングなどに所属し、デジタル分野の専門コンサルタントを務めた。現在は、世界的なCDO(最高デジタル責任者/データ責任者)コミュニティであるCDO Clubの日本組織であるCDO Club Japanにおいて、日本のDXを推進すべく活動している。

世界のDX事情をよく知る水上氏から見ると、DXに対するモチベーションは日本と海外でだいぶ異なる。さらに、日本のDX推進を阻んでいる課題についても語った。

CDO Club Japan 理事・事務総長 水上晃氏

日本のDXは、人手不足や老朽インフラが推進力

現在の日本では、あらゆる分野のすべての関係者が、何らかの理由でDXに取り組む状況にある。その主な要因として、水上氏は次の4項目を挙げた。

(1)デジタル接点が当たり前になった消費者の行動
(2)不足している労働人口
(3)限界に達しつつある各種インフラ
(4)ChatGPTなど、キャッチアップが困難なほど急速に発達する技術

シェアリングエコノミーやギグワークを広めたUberのような、資産を持たずにテクノロジーだけで既存産業を壊せるビジネスモデルの出現も、大きな影響を及ぼしている。

労働人口の不足は大きな問題で、海外から補おうとしても難しい。円安の影響もあって、海外の人材には日本へ来るモチベーションがなく、日本はリソースを外部から得られる国でなくなってしまった。インフラについては、高度成長期から構築してきたものが古くなり、維持コストの圧力に押しつぶされそうな状況だ。

今の日本は、多くのマンパワーを投入してプロジェクトを進めたり、事業を運営したりするモデルが、もはや成立しない。攻めて成長するどころか、守ることすらできない状況にある。

そこで、1人で複数人分の作業をできるようにする、年配も若手並みに働ける、といった仕組みを作らなければならない。デジタルをうまく活用すれば、これは実現可能だろう。

これが、日本をDX推進へと動かしているモチベーションなのだ。

海外は、DXに企業の生き残りをかけている

海外の企業では、CDOが先頭に立ってDXを推進している。そうした役割を担うCDOが増えた背景には、以下の流れがあったという。

まず、インターネット普及後にiPhoneが登場し、消費体験が一気にオンライン化・デジタル化した。2010年代にはデータサイエンスの注目度が高くなり、視聴データの分析結果を参考にしてコンテンツを制作するNetflixなど、データサイエンスをフル活用した経営が広まった。

大量のデータを利用する動きは強まる一方で、ビッグデータやIoT、現在のAIによる第4次産業革命へと発展。さらに、ブロックチェーンやグリーントランスフォーメーション(GX)など次から次へ生ずる変化が、全産業をDXへと巻き込んだ。

2020年代に入ると、新型コロナのパンデミックや、国際的な緊張の高まりもポイントだ。これまで平和や安定を前提に競走してきたが、コロナや平和に対する危機感がビジネスの社会的基盤を変えてしまった。経済安全保障とサステナブルなビジネスをどう両立するかが、中心的な議論になっている。

こうしたドラスティックな変化を、水上氏は「DXにおけるグレートリセット」と呼ぶ。企業トップの条件がデジタルに精通していることとなり、コロナのタイミングで経営層が入れ替わってCDOが増えていった。

また、コモディティ化するChatGPT的なAIをどう使うか、どう安全に運用するかも、重大なテーマだ。「シャドーIT」ならぬ「シャドーAI」にうまく対応する目的で、最高AI責任者(CAIO)といった役職も生まれつつある。

GXと関係するが、世界の常識となったESG経営(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治ガバナンスを重視する経営方針)も、DXの大きな推進力だという。たとえば、先進的な企業は持続可能性のあるサプライチェーンを構築しようとしており、これに加われるかどうかが企業の運命を左右してしまう。

かつて日本では、「企業城下町モデル」が大きな力を発揮した。現在の世界は、それとよく似たインターネットをベースとするサステナブルなサプライチェーンが、企業の生き残る手段になった。このサプライチェーンに入るには、DXが必要不可欠である。

DXの必要性を理解し、少しでも前へ進む人を増やそう

日本と海外では、DXに対する問題意識も異なる。DXに取り組み始めた日本企業の割合は5割程度になったものの、経営陣の関与は不十分だそうだ。現場レベルでも44%がネガティブだったり無関心だったりする状況で、DXがいわゆる「やらされ仕事になっている」とした。ITアレルギーのある人に何とか活用してもらう、というレベルにとどまっている。

日本の数理教育レベルは世界トップクラスなのだが、大人になって社会に出るとそうした方面の業務をあまり希望しないという。水上氏は、社会の側に受け入れる土壌ができておらず、経営者や中堅が若い世代のDX志向をつぶしている、と厳しく指摘した。これでは、単なるデジタル化はまだしも、DXが目的とする大きな変化の実現は望めないだろう。

もちろん、日本でもDXを強力に推進している企業は少なくない。しかし、分からないからやらない、難しいからやらない、売り上げが増えないからやらないという姿勢も多く、二極化が進んでいるようだ。水上氏は「無理解の分断が日本のブレーキになる」とした。

そして最後に、「対話を通じてまず理解する」「やるべきことの意義を共有、共感する」ことを通じ、「少しでも前へ進む人が増えれば」とまとめた。


全産業連携DXセミナーレポート Vol.1は、こちら
全産業連携DXセミナーレポート Vol.2は、こちら
全産業連携DXセミナーレポート Vol.4は、こちら


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