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エゾウィンが取り組む「農業DX」最前線、コスト削減・安定稼働を実現する“IoT通信”の役割

こんにちは!ミーク広報です。
ミークでは様々なパートナー企業と協業して社会課題の解決を目指しています。
今回はパートナー企業対談の第1弾として、「農業DX」に取り組むエゾウィンとの対談記事をお届けします。(エゾウィン導入事例


日本の農業現場は様々な課題に瀕しています。例えば労働人口の減少です。北海道は、国内農業生産に占めるシェアが高く、日本の食糧庫とも言われています。しかし、北海道における農業人口は2040年までに50%以上減り、2021年に130万人いた農家さんが2040年には35万人になる見通しで、今後は人手不足による食糧危機が懸念されています。
その課題解決に向けて取り組んでいるのがエゾウィン株式会社です。2040年に国内最大の完全自動化農場を実現させる計画を立て、その第一歩として「レポサク(Reposaku)」を提供しています。
そして、そのレポサクの通信にはミークの提供する「MEEQ SIM」が活用されています。
IoTは日本の農業の未来をどのように変えていけるのでしょうか?エゾウィンの大野宏CEOと語り合いました。

エゾウィン株式会社 CEO 大野 宏

2007年大学卒業後、輸入代行サービス事業を起業。企画、開発、運営のすべてを自社で行い、国内トップシェアを獲得したサービス有り。父の病気が原因で地元に戻り、TMRセンターのマネージャーと出会い農業DX「レポサク」の原型を開発。2019年にエゾウィン㈱を創業し、現場の作業を手伝いながら意見を貰いシステムをアップデート。2023年に、J STARTUP HOKKIDOに認定。

ミーク株式会社 営業本部長 石塚 大介

2000年大学卒業後、PCメーカーにて法人及び官公庁向け営業を経験。その後、2007年にソネットエンタテインメント株式会社(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)へ入社。MVNE/MVNO事業立ち上げ当初からモバイル事業に従事し、2019年ソニーネットワークコミュニケーションズスマートプラットフォーム株式会社(現ミーク株式会社)設立とともに出向、2021年に転籍。

完全自動化農場に向けた第一歩「レポサク」

──まず、「レポサク」を開発するに至った経緯をお教えください。

大野:最初に立ち上げた事業が破綻してしまい、資本主義に絶望していた時期がありまして(笑)、いろんなご縁があって、地元で行者ニンニクの栽培を3年間手伝っていました。その時に農家さんと関わるようになり、農業を取り巻く環境の厳しさを肌で感じたことがきっかけです。

具体的には、「手書き日報をなくしたい」という考えから始まりました。
農家さんは、作業の進捗を手書きで日報に記しているのですが、その作業が大きな負担になっていました。ただ、日報を紙からタブレットに置き換えるだけでは自動化にはならないですし、農家の方々も導入してくれません。そこで、GPSロガーを使って精密な進捗データを簡単に取得できれば、日報を作成する作業が大きく削減できるほか、“感覚”で行っていた作業をデータ化することで効率化も図れるのではと思い、「レポサク(Reposaku)」の開発を始めました。

──そんなレポサクには、壮大な計画がありますね。

大野:まず大前提として、私たちは2040年に「完全自動化農場」を目指しています。そして、その第一歩がレポサクです。完全自動化農場とは、簡単に説明すると人がいなくても耕されて、種が植えられて、追肥や防草といった作業が行われた上で収穫されるというイメージです。
この先、ヒューマノイドロボットや車両ロボットはどんどん増えて、性能も進化していくでしょう。その時に、畑でロボットがどう動くかが正確にデータ化されていないと、全てぐちゃぐちゃになってしまいます。機械が発達していくことを前提として、その機械にどういう指示や振り分けをするかを私たちエゾウィンがリードしていきたいと考えています。

石塚:実際のところ、ロボットの方が人間よりも効率よく作業が進められるのでしょうか。あくまでも人口減少への対策として、人手が足りない部分をロボットが補うというイメージですか?

大野:ドローンの農薬散布などは人間よりも効率がよいのですが、基本的には1台(1人)あたりの農作業効率は人間には現時点では勝てません。
今まで「10人で100」できていたものが、人口減少により「6人で100」やらなければならなくなってきているので、その部分を機械で補う。それが5人、4人と減っていき、そのためにはロボットは10台だったり20台必要になるかもしれません。
実際、北海道では、1つのセンターに対しておよそ30~40人で約1,000ヘクタールを管理しています。今後、ロボット技術の進歩に伴いその対応をする人数は減っていき、そう遠くない未来には少人数で管理できる状態が実現すると思っています。

完全自動化農場を実現するには「精密な行動データ」「関係者全員の行動データ」「現場の勘」といった3つの要素が必要となり、そのデータをレポサクで収集しています。

レポサクには高精度のGPSロガーを搭載しています。準天頂衛星システム「みちびき」に対応した「CLAS」という規格で、理論値誤差12cmで1秒ごとに位置情報を取得できるため、従来の「SLAS」を使った一般的なGPSロガーと比べて極めて精密なデータを収集できます。

石塚:想像している以上に精密ですね!農業DXにおいて、このレベルの精密な位置情報が必要になるのですね。

大野:はい。石塚さんのおっしゃる通り、「ここまでの精密さは必要なのか」と最初は懐疑的な方々もいらっしゃいます。しかし、農作業は細かい作業が多いため、これくらい精密なデータでないと、農作業全体のデータ分析などで使えるような位置情報にはなりません。細かいリアルな作業データを蓄積して初めてDXに向けた第一歩となります。

──農業においては、高精度の位置情報がDX推進に不可欠なのですね。レポサクの「挿すだけ・カンタン」という特長についても伺ってよろしいですか?

大野:精密なデータかつ「現場関係者全員のデータを取得すること」が農業DXにおいては重要になると思っています。
農家の皆さんが「導入しよう!」と決断してくださるためには、やはり圧倒的な「カンタンさ」が重要です。
農家さんは、ITやシステムに詳しい方ばかりではありません。そのため、3ステップあると有効に活用できないと仮説を立てています。
例えば、電源に繋いで、ルーターを起動して、Wi-Fiに接続して、アプリを立ち上げて……など。これだけですでに4ステップ以上となってしまっています。
車両のUSBポートに「挿すだけ」で導入できるという簡単さが、現場関係者全員のデータ取得につながっています。

石塚:3ステップのお話、すごく腑に落ちました。当社も「IoTを導入してみたはいいものの、うまく活用できていない、最適な運用ができているのかわからない」といった相談を受けるケースはよくありますね。
MEEQサービスも、誰でも簡単に管理や運用ができるというところを大事にしているので、似ているところはあると思います。
IoTに対する障壁は、今でもまだまだ大きいと感じますね。

──先ほどお話しいただいた3つの要素の「現場の勘」とは、具体的にどのようなことでしょうか。

大野:ここでは現場のヒアリングをすることで「現場の勘」を蓄積しています。
例えば、以下のような畑があったとして、効率を考えたら左の方が最適に見えますが、実際は右だったりします。

畑にも個性があり、農家さんはその個性に合わせた動きをしていたり、現場の判断で動きを変えていたりします。それらは行動データだけではわからないので、レポサクで作業を見える化し、現場のヒアリングをすることで個性と判断から「現場の勘」を蓄積しています。その「現場の勘」を今後、車両やロボットを指示する側にインプットしていければさらに農業DXは進んでいくと思います。

農業ならではの通信の悩み

──レポサクのサービス開始にあたって困ったことはありますか?

大野:誰もが簡単に導入できるようにするためには、当然ですができるだけ販売価格を下げることが必要でした。その中で通信の選定はとても苦労しましたね。
一般的には、IoTプランのような形で月額数百円で容量や転送量が決まっている通信プランが多いのですが、私たちのような農作業においての通信は、繁忙期と閑散期があるので、一般的な「SIM 1枚あたり月額数百円」のような定額を支払うプランでは費用がかさんでしまいます。
そこでミークさんに相談させていただき、パケットシェアという形で通信コストを抑えることができました。

石塚:実際にこういったお悩みのお客様は結構多くて、例えば決済端末は、決済をした回数によって通信量が変わるため、当然、来客数が多い店舗とそうでない店舗とでは通信量に差が出ます。作業員に持たせるタブレットや、稼働状況を監視するセンサーなど、SIMごとに容量がバラバラというケースは意外と多いです。 

そういったお悩みを解決するために、複数回線で共有できる大容量の通信回線を買っていただいて、SIMを自由に発行できて通信容量をシェアできるプランを提供しています。
当社はドコモ、ソフトバンク、KDDIに対応しているので、3キャリアの別々の通信であってもシェアできることは大きな特長となります。

パケットシェアプランのイメージ

大野:3キャリアでパケットをシェアできるのは大変助かります。現在は1キャリアのみの通信でカバーできているのですが、農場は山奥など電波の届きにくい場所も多いため、今後は複数キャリアのSIMの利用も検討しています。
1秒ごとに通信をして、精密な位置情報を取得するためには、農場ごとに最適な通信を選択することが必須になってきますので。

石塚:当社だけで広域エリアを網羅できることは、お客さまに選定いただけるポイントの1つです。あとは、IoTサービスにおいて、通信はインフラのような役割を担っているため、基本的に「通信は止めてはいけない」という認識でサービスを提供しています。そのため、他社では全体の容量を超えたら低速になるというプランが多いなか、当社では、超過しても同じ速度で使えるようにしています。超過分は従量課金でご請求させていただく形です。

大野:通信を止められてしまうとサービスに支障が出るため、MEEQの導入を検討する際も、超過分はどうなるかを最初に確認させていただきましたね。

IoT時代に高まる通信のセキュリティリスク

――IoTの普及に伴い、セキュリティに関する話題も増えてきました。

石塚:農業に限った話ではないですが、IoT導入の際のハードルとなり得るものの1つとしてセキュリティの問題があります。通信部分はどうしてもセキュリティホールとなるケースも少なくないので心配される企業も多いのですが、農業でもそういった懸念はありますか?

大野:おっしゃる通り、農業でもセキュリティリスクはあります。
現在は精密な作業データを収集しているフェーズのため、セキュリティに対する大きな懸念事項はありません。しかし、例えば「現場の勘」が蓄積されていったとして、その勘こそが、ある農家の作物のおいしさの秘訣だったりします。私たちの事業は進めば進むほどインフラの根っこに入っていくので、セキュリティ対策については現在、検討しています。やはり何よりも、農業現場の人が安心して導入いただけることが重要です。

石塚:仮に漏洩しても問題がないデータだとしても「漏れる」ということが問題視される時代になってきていると思います。エゾウィンさんでは将来的に3キャリアのSIMを活用するかもしれませんが、3キャリアの通信回線を1つの閉域網に組み込むことができるサービスをミークでは提供をしていますので、できるだけエゾウィンさんや農業現場の方に負担のかからないセキュリティ対策も支援していけたらと思っています。

──今後の展望についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

大野:まずは2040年に完全自動化農場を実現するというゴールに向かって、今のレポサクの拡大を続けていきます。
現在は車両への搭載がほとんどですが、小型化が進めば人に持たせることもできると思っています。車速や旋回幅などからどのような作業をしているかをAIが判別することは可能と考えていますので、農業関係者の負担を少なくしつつ、正確なデータがさらに取得できます。
もちろんこれらは今のレポサクがたくさん売れて、ミークさんのように協力していただけるパートナーが増えていった先に描いているビジョンで、小型化が目的ではありません。
農業の範囲にとどまらず、「高精度の位置情報を取得して効率化を図りたい」という、自治体や様々な業界の企業とパートナーになって、レポサクをさらに付加価値のあるサービスにしていけたらと思っています。

石塚:当社は「世界を変える、そのイノベーションのそばに。」をビジョンに掲げており、お客様やパートナー企業と共にイノベーションを創出しています。
当社には、資本参加してくださっている様々な業界のリーダーをはじめ、MEEQを使ってくださっているパートナー企業が数多くいます。
よくお客様から「こんなハードウェアはありませんか?」といった問い合わせも受けるので、農業に限らず「高精度な位置情報の取得したい」と検討している企業様にはレポサクを紹介させていただこうと思います。今後も完全自動化農場の実現や、その先にある様々な業界のDXに一緒に取り組んでいきましょう。


今回はMEEQを導入してくださっているエゾウィンさんとの対談をお届けしました。
「完全自動化農場」の実現が、15年後には現実的になってきていて、近年の技術の進歩は本当に目を見張るものがありますね。
ミークの行っている事業は、農業現場での社会課題に限らず、様々な業界や産業での課題解決を支えています。
今後も、パートナー企業様との対談記事を載せていけたらと思っていますので、楽しみにしていてください。

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