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エンジニアが「幸せな職業人生」を送るためのキャリア

Rocro(株)として GitHub Universe 2017@San Francisco に出展

小早川 知昭 / ミークCTO
大学院卒業後、大手通信事業者、経営コンサルティングファーム、ソニー (株)等を経て、Rocro(株)設立。2020年 ミーク(株)に参画
趣味は登山、競馬、筋トレ、読書、ダイエット、ラーメン、料理、焼き芋作り

皆様こんにちは、ミーク株式会社CTOの小早川です。記事を読んでくださりありがとうございます。今日は、エンジニアとしてキャリアを始めようと考えている新卒周辺の方々に向けて、私がこれまで試行錯誤して多くの失敗を重ねてきた経験や、周囲の人々の様子から、どのような就職をしたら幸福なエンジニア人生が送りやすいかを考えてみたいと思います。

いい就職かは「会社」では決まらない


大学4年生の当時の私は、工学部に所属しながらも何か血迷って都市銀行と呼ばれていた銀行から内定をいただき、そこで働くつもりでいました。しかし研究室で通信の研究をしてみたところそれが非常に面白く、そういえば自分は技術が好きで工学部に来たんだったと思い出し、学部での就職はやめて大学院に進学しました。本当にいい加減で迷惑なことをしていたなあと恥じ入ります。

その後大学院で引き続き通信の勉強をし、通信事業者に就職しました。当時はまさにISP誕生直後のインターネットが普及し始める瞬間で、その通信事業者は就職人気ランキング1位でした。非常に大きな会社なので、配属された職場によっても評価は変わるのかと思いますが、私には水が合っていたのか、伸び伸びと仕事のできる素晴らしい会社でした。IP通信はその会社にとっても新しい技術で、それを担当する人手は足らず、新入社員の私でも勉強して取り組めばどんどん仕事を任せてもらえました。マシン室に閉じこもって夢中になって機器をいじっていたものでした。

しかし一方で、会社の人気とは裏腹に、私は運が良かっただけだとも感じていました。私がその会社に就職して良かったと思う理由は、生涯にわたって取り組める技術分野でエンジニアとしての修行をきっちりできたことなのですが、エンジニアとして同じ会社に入っても、十分な経験を積む環境でない同期社員もいました。就職活動に際し、「会社」を選ぶことに比重を置きすぎると、こんなはずじゃなかった、と思う結果になるかもしれないと思ったものでした。

エンジニアが選ぶべきもの

ニーズのある技術

エンジニアを目指す皆さんは、夢中になって楽しく仕事を続けられ、自分の腕前も高まりそれが評価されて自分の価値になり、いつも仕事に困らず経済的にも恵まれる、人によっては経営者を目指す、というのが割と多くの人から見ても理想的なあり方の一つなのではないかと思います。

そのためにはまず、自分が興味を持て、長い期間ニーズがありそうな技術分野を選ぶ必要があります。例えば音楽CDの例を考えてみましょう。CDの発明により、音楽はデジタル化されました。音楽情報は光ディスクにデジタル情報化されて蓄えられ、再生されます。この仕組みを商品化するために、多くの光学系エンジニアが活躍していました。しかし技術の進歩はとどまることなくより便利に音楽を楽しむ方向に進み、今では音楽情報はフラッシュメモリに蓄えられたり、ネットワークでストリーミングされたりします。光ディスクはあまり使われなくなり、新規商品開発も見られなくなりました。光学系エンジニアの仕事はもちろん今でも多数ありますが、この変化の中で職場環境を変える必要が生じたエンジニアの方は多かったでしょう。

やはり自身の仕事人生の間、その技術に一定の需要があり続けることが見込まれる分野を選ぶことは最も重要な選択になるかと思います。例えば今ですと、月並みですがそれはソフトウェアでしょうか。AIはアルゴリズムを作れるのであればもちろん良いと思いますが、多くの場合使う側になるでしょうから、結局ソフトウェアの一種だと思います。

修行に適した環境

さて、次に探すべきは、修行に適した環境です。最初の職場で、例えばチームでのソフトウェア開発の仕方や、あるいはネットワークの仕組みなど、そこで必要なことを学ぶことになるでしょう。しかしそれは多くの場合、体系だって教えてもらえるものではありません。チームに放り込まれて断片的にツールの使用方法だけ教わったり、検証しておいて、と言われて過去の資料やマニュアルを見ながらなんとかそれを実行したりというようなものになるかもしれません。それを面白いと思って、気が付けば終電、くらいの勢いでのめり込むほど夢中になるようにやってください。実験や検証など、自分で試行錯誤しつつ、調べつつやっていれば、1, 2年で十分に頼られる存在になっているはずです。

そのような夢中になれる環境が得られるなら、それは大企業でもスタートアップでも良いんじゃないかと思います。昔は大企業ほど、高価な開発設備や学ぶべき先輩、顧客の多数ついたプラットフォームが得やすかったと思います。しかし今では繁盛するプラットフォームはそこかしこにありますし、多くのソフトウェア開発には高額な設備は必要なくなってきています。また大企業の現場は昔に比べてエンジニアリング業務を外注して社内に持たない場合が多くなっており、それでは修行になりません。企業の規模ではなく、修行を積める現場に配属されるかどうかを重要視してください。未経験から何でも目指すことが可能なのは、新卒の特権です。その特権を生かし、最初の職場はあなたが活躍したい分野の修行ができることで選ぶのです。ここで経験する内容は、あなたの一生を左右します。よく選んでください。中途で選びなおすのは結構難易度が高いです。

エンジニアが持つべき経営者の視点

エンジニアとして数年間没頭して仕事をしていると、会社の意思決定や判断に疑問を持つことも多くあるでしょう。これは絶対売れるのに、とか、この技術が絶対これから伸びるからもっとここにリソースを投入すべきなのにもったいない、とか、いろいろ不満に思う訳です。それはあなたが正しい場合もあるでしょうし、会社としての意思決定が正しい場合もあるでしょう。エンジニアが長く幸せに活躍するためには、このような不満を持つ状況を打破できることが望ましいです。それに何が必要かは状況によって異なりますが、共通して重要なのは管理者・経営者の視点を身に着けることだと思います。「経営者が何を見てどのように判断しているか」を知ることです。

可能であれば、経営者の判断をできるだけ見られる環境を目指してください。経営者が何(どんな数字、あるいはどのような資料)を見て、どのような判断をしているのか、できるだけ近くで学ぶようにしてください。パワーポイントによる資料作成ばかりが仕事だということはよく残念な感じで言われることですが、それが経営判断に使われる場合、極めて重要な修行になります。適切な粒度の事実を、判断に適したフレームワークで整理し、合理的な意思決定を行う。もちろんそれはエンジニアの本分からは少し離れた修行なので、ここではそれを知るだけでまずは十分でしょう。少なくとも、興味を持つようにしてください。私は実はそういうことにまったく関心がないまま、新卒入社当時、通信事業者のエンジニアとして嬉々としてのめり込んで通信機器をいじっていました。私の目標は技術とビジネスを身に着けて自分で事業を興すことだったので、しばらくエンジニアをした後に、今度はビジネスの修行だといわゆる戦略系コンサルティング会社に転職しました。しかし経営判断というものにまったく関心がなく、ただひたすらエンジニアとして鍛えていただけだったこともあり、顧客である経営者が何をもとにどのように判断をしているかをさっぱり知りませんでした。それで経営コンサルタントとしては大変に苦労したというかまるで仕事になりませんでした。

別に皆さんはエンジニアとして経営コンサルタントを目指すという訳のわからないことではないと思いますが、経営者の視点を持って業務を見渡せば、なぜそうなっているのかに納得感が得られるでしょうし、あるいはそれが合理的でない場合には、より適切な方向に会社の判断を変えていくこともできるかもしれません。会社や組織の中でよりうまくやっていけるばかりか、担当する業務の選択や転職の際にもより良い判断が期待できます。それには事実の整理の仕方や図示の方法を学ぶ必要があり、古い本ですが以下がおすすめです。

“考える技術・書く技術”, バーバラ・ミント著
“マッキンゼー流図解の技術”, ジーン・ゼラスニー著

また同時に会計の知識はエンジニアでも必ず必要になります。簿記2級がぴったりちょうどいい内容ですので、これは出来るだけ早めに取得しておいてください。なお資格として持っている必要は別にありません。内容がまさに必要十分というだけのことです。

エンジニアの活躍はまだまだこれから


日本社会は、以前に比べて大企業志向からベンチャー志向、終身雇用から転職前提にと変わってきています。昔からアメリカを追っている日本社会ですが、やはりそれは今でも続いていて、つまりアメリカを見れば日本社会の変化の方向性がおおよそつかめるということは変わっていないと思います。シリコンバレーやサンフランシスコがスタートアップの集積地であることの説明は様々になされていますが、会社を起こして成長させていくのに必要な専門家や、事業に必要な専門サービスが揃っており、次から次へと事業が生まれ、成長していくことができることがその理由ではないでしょうか。

そのような環境は日本でも揃いつつあり、次々にスタートアップが勃興しソフトウェアエンジニアが活躍するという構図は、日本でもさらに強まっていくでしょう。エンジニアとしての腕を磨き、経営者の考え方を知って、出来る範囲でオーナーシップをもって商品やサービスを開発し続けていれば、それはきっと「幸福なエンジニア人生」の一つになるのではないかと思います。会社の社員であることを「身分」と捉えるのではなく、エンジニアであることを「職業」として考え、多くの皆様に幸せな職業人生を歩んでいただければと願っています。

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